ブックイット!book it!とは?

ブログ国内最大手のはてなダイアリーは、同時にブログの書籍化でも国内一番手でした。「book it!」の書籍化サービス提供は、その「はてなダイアリーブック」のサービス開始と共に始まりました。パイオニアならではの苦労とその対価としての達成感。じっくりとお聞きして来ました。ブログと本との関係性に付いても、とても興味深いお話をお伺いしました。


はてなダイアリーブック誕生秘話

ー早速ですが、近藤さんがオンデマンド印刷で「
はてなダイアリー」の本を作ろうと思った、そもそものきっかけは何だったんですか?

 JAGAT(日本印刷技術協会)の岡さんから取材をしていただいた際のインタビューが直接的なきっかけでした。ただ、その前に何人かの方から「本に出来ないですか?」と、いうのは言われていました。ですから、ダイアリーを本にすると言うのは絶対にいいアイデアだ!素晴らしい事だと思ったので、是非ともやりたいと思いました。

ーブログのオンデマンド書籍化については、本当にニーズがあるのかどうか、結構醒めた意見も多いと思いますが?

 会社としては商品としての収益源については余り重要視していません。価格設定を見て頂ければお分かりいただけると思うのですが。はてなの選択基準のひとつになればと。
基本的には、はてなで日記を書いていると、きちんとした本にしてくれるので「はてなで書こう!」というきっかけ、選択基準、付加価値要素になればと思っています。

ー11月にお声をかけていただいて1月にサービス開始というスピーディな展開でしたが、サービスインまで結構たいへんだったのではないですか?

 開発についてはいろいろあったんですけど、ウェブのブラウザで見えている物をただ単にコピーするだけというよりは、それこそ、それで良ければ自宅のプリンターで印字すればいいだけの事ですから、できるだけ「本」っぽいものにしたかったんです。

はてなダイアリーブック


 小説を文庫本で読んでいるときのように、書店で手にとれるような物になったときの感動を感じて欲しかった。立派な本なんだけど、そこに印刷されている原稿が自分の日記なんだ!と、いう感動ですね。ですから禁則とか日本語の処理も含めて気を付けて開発しました。「紙」にして喜んでもらうような物にしたかったんです。

本とブログのお互いの関係は?

ー本と言うとウェブとかブログの対極にある存在というイメージも有りますが?特に本にする事でブログの動的な特性が無くなってしまいますが?

 私は、全然反対の物だとは思っていません。実はブログを補完してくれ、さらに幅を広げてくれる物なのでは無いかと思っています。

 例えば、皆さんははてなを書くために物凄い時間を注ぎ込んで、労力もお使いになっています。
沢山の時間を使っても手に入れられる物は、今は「体験」しかない。脳の中の記憶だけ。あとはサーバー内のデータだけしかありません。体験は確かに残るのですが、だんだんと消えていってしまう。それに、サーバーのデータはデリートボタンを押して削除をすれば終わりです。

 沢山時間をかけて残らないと言うのは非常に残念な事だと思います。今そこに有るウェブのデータが手に取れるという行為は、まさにその行為を通じてようやく「残る」わけですから、「1年書いたら本になりますよ!」と言うオプションは、たいへんいいことだと思っています。

ーはてなダイアリーブックの最初の本は、近藤さんの「はてなダイアリー日記」でしたが、感動はありましたか?

 自分の日記がはじめて本になったときには純粋に感動がありました。良かった残せた!という感じ。「ほっ」としたというか、もうこれで消えないぞ!と、いう安心感のような物がありました。
 写真とかでもそれこそ印画紙に残すまでは、なかなかまだ安心感が無いですから。写真でも同じくネガをプリントして、ようやく作品として形になったぞ!と。最後のアウトプットまで行ってこそ安心感がありますね。現像した後のネガフィルムをプリントして、始めてそれが作品として定着することができる。そんな感じがします。

ー「book it!」のサービスへの満足度はいかがですか?

 当初目指していた文字とか紙質とか、小説とか書店で売られているような製品を目指していたレベルは十分に再現できたと思っています。きちんとした本としての質感とか体裁というのは実現できていると思います。実際にお客様からも、かなり高い評価を頂いています。きちんとした「本」としての価値は感じ取って頂いていると思います。

原稿と本の関係は、楽譜と演奏の関係に近い

ー「book it!」のサービスを御説明する際に、はてなダイアリーブックの本をお見せするとかなり感動をされます。

 それは嬉しいですね。特にお仕事で本を作られているような方だと、どうせパソコンからペロッと出したような物だと思われがちな、そんな気がします。その予想は裏切っているかも知れませんね。
 写真だったらネガは楽譜でプリントが演奏だ!なんて言われる事がよくあるんですけど、本もそれに似ている所があって、原稿のテキストが楽譜で、本の組版とか製本などが演奏なんだ!という感じでしょうか。

 本当はユーザーの方々がしっかり時間を使ってこつこつ作られるのが自己表現としてはベストなんですが、なかなかインフラの問題も有りますし、我々としてもできる事に限りが有りますから。ただ、できるだけ時間を使って、しっかり丁寧にやらせていただいています。

ー「book it!」のサービスに不満はありませんか?

 そうですね。敢えてあるとすれば、まだまだ十分にご利用いただいていないことでしょうか?できれば、もっともっと沢山の人に知ってもらって、日記を半年分書いたらそれこそ8割程は本にして頂くと言うくらいに一般化して欲しいと思っています。うちの告知不足と言う部分も有るんですが。それぐらい一般化してほしいという気持を強く持っています。

 この「はてなダイアリーブック」という製品を今後どうこうしていくためには、それくらい大勢の使う人達が出て来てくれないと、なかな実現は難しいですね。いくら素晴らしい機能でも、使ってくれる人が数名だったりすると、さすがに実現はできません。当然サービスを維持する為にはコストも掛かりますから。

 そして、もし、そういう段階、もっと大勢の人たちに使っていただける段階になったときにどうするか?と、いうのはお客さんの使い方次第というところもあります。ですから、それについては我々がどうこう言う物では無いですから、そう言う意味では現状のサービスについて満足しています。

本にするというサービス=テキストを大切にしたい気持の現れ

ー自分の日記を本に残せてとても嬉しい人と、だから何なの?と、いう人と、ユーザーは両極端に別れるように思いますが、そのあたりはどのようにお考えですか?潜在的な利用者について、どのように予測されていますか?

 先ほどの8割という割合はオーバーかも知れませんが、潜在顧客としては、実質的にダイアリーユーザーの数割程度はいると思います。そういう方々がどんどん本にするという状態に持っていければと思っています。
 ただ、はてなダイアリー利用者の方々の内でも、「体験」を重視して使われている方々も大勢いると思います。はてなを使って過ごす時間が目的であり、会話のやりとりのような、時間を共有して体験したことを楽しまれているような方々ですね。

 そういった場合では、必ずしも本と言う形にする必要は無いですし、たとえば夜中友人達とお酒を飲みながら語り合った内容を本にするのか?というと決してそんな事は無いですし、それはそれで当然だと思っています。体験で満足して、その体験にこそ価値があるんだ!と言うケースがあるのは当然ですね。

ーはてなダイアリーブックのサービス提供で、はてなダイアリーは変わりましたか?

 はてなダイアリーを使い始める際にアンケートを取っているのですが「はてなダイアリーだと本にできるので、それで使い始めました」と、いうご意見を伺います。そういうご意見はとても増えましたね。

 あとは、はてなダイアリーではユーザーさんのテキストをとても大事にしている。という事は若干かも知れませんが、メッセージとして伝わっているのでは無いかと思っています。テキストを上製本にして取っておきましょうと言っている会社がテキストを大事にしない訳は無いだろう!という、そういう部分が伝わっているのでは無いか?と、思っています。そういう運営者が、そんな簡単に「データが消えてしまいました!」なんて事は言わないだろうと。我々が皆さんのテキストをとても大切な物として扱っているという事はちゃんと伝えたいし、なんとか受け取って欲しいのです。


はてなダイアリーブック上製本仕様 

 やはりデジタルデータで誰かのところにあるという不安感は皆さんきっとあると思うんです。最近はブログ運営の移管とか、そういうこともありますから。気が付いたら自分の書いたデータの管理者がいつの間にか変わっていたなんてこともあり得ます。はてなダイアリーではそんなことはありませんが、でも、さすがに本として本棚に有る物は、そうそう簡単に無くならないですからね。
 それこそ、そのへんの本屋さんにあるものと比べたとして、「自分の本」と言うのは何物にも換え難いと思うんです。少なくともその方本人にとっては、とっても価値があるものだと思います。ですから、なるべくいい本にしてお届けしたいですね。

ーご利用になった方のご意見で、特に印象に残った物はありますか?

 身内の話になってしまいますが、義理の母が自宅でお料理の先生をやっていまして、はてなダイアリーで書いていたお食事日記を本にして彼女にプレゼントしました。すると、そこの生徒さんが、その本を貸して欲しい!ということで、ぐるぐる回し読みが始まって、それを皆さんがしっかりと読んでいたということがありました。

 それを聞いて、正直そこまでとは思っていなかったので、これは凄いことだなあと感心しました。やはり、本にすると不思議と読みたくなるんですよね。日々書き続けた物が回し読みされるなんて素晴らしい体験じゃないですか?

100%作り込まないのが「はてな流」

ー利用者のニーズに応じて凄く柔軟に、かつ即対応で開発を進められていますが、それはとてもたいへんな事ではないですか?

 ダイアリーブックについては、縦書き対応や日付け毎に改ページをしないという機能追加を既に行いました。

 うちで作るときには基本的に100まで作り込まないようにしようと思っているんです。 みんなが欲しい物が100あるとして、自分達の考えで考えられるのはせいぜい30とか40なんですね。今目前に無い物を想像して、それを100まで作り込んでしまうと、実際には全然的の外れたものになってしまう可能性があります。
 せいぜい60とか70の絶対必要な物だけはまず作る。それから、お客さんとの対話ができると言う雰囲気、状態を作っておいて、その中で「あ、それは!」と、いうモノ、素晴らしいアイデアや要望をなるべく速く作っていく。そういう姿勢で開発を進めています。

 即断即決即開発で良いものはどんどんその場で作っていきます。やっぱり後は「好き」というか、ユーザーさんを驚かせたい!と、いう気持があります。基本的にはユーザーさんを驚かすのが大好きで、いたずらっ子と言うか、そういう心境で仕事をするのは大事なんじゃ無いかな?と、思っています。

ー例えば、最近導入されたダイアリーブックの縦書き仕様は、我々は何も知らないまま突然始まってしまったんですけど、実際あれは「はてな流」な訳ですね。

 そうですね(笑)。

「電話と手紙」と同じだと考えている。ブログと本の素敵な関係。

ー実現性とかコストとかの要素を全く抜きにして、今後「book it!」を通じてやってみたいことをぜひお聞かせ下さい。

 新しい試みとしてはクラブの活動を本にしましょうというのは、はてなのキーワード機能の仕組みがあってこそ始めて成立する物なので、是非実現させてみたいです。「映画百選」とかそういうクラブの活動を本にしていきたいというのが、この次の願いです。

 あとは、例えば、飲み会でどうしても残したいような素晴らしい言葉があったり、是非記録したい!というような、そういう事はありますよね。将来的には会議などでそれぞれが音声認識を使って時系列で記録しておいて、それをまとめた結果今までの議事録形式では見つけられなかった発見があったり、またそういう成果を本にして共有すると言った、そういう使われ方はあると思いますね。

 本とブログと言うのは、ちょうど手紙と電話のような物だと思っているんです。電話が出来たから手紙が無くなるか?と、言うとそんなことは決して無いですよね。逆に手紙は良い物なのだけど電話はダメな物なのか?と、言うとそんなことも無い訳です。結局使い分けだと思うんですよ。例えば、今夜彼女とどうしても話したいと思ったらそこで使うのは電話だし、同じ彼女に対して、どうしても直筆で手紙を通じて気持を伝えたい!と言うような場合もあります。

 本とブログと言うのもまさに同じで、電話がブログなら、手紙が本というような形で、これから共存共栄していくんじゃ無いかと。そういう風に思っています。

(2004年6月21日 株式会社はてな本社にて)

 

インタビューは渋谷鉢山町のはてなさんで行いました。近藤社長はもともと上製本を手作りするほどの本好き。はてなダイアリーを本にするサービスは「ダイアリーのテキストを大切に考えている気持の表現でもあるんです」と、いう言葉がとても印象的でした。「楽譜と演奏」、「電話と手紙」といったシンプルで適切な比喩にも説得力を感じたのですが、その明解さや洞察力に、はてなのサービスが大勢の利用者によって受け入れられている理由の一端を感じました。

はてなダイアリーブック」に興味をお持ちになった方は、ぜひ「はてなダイアリー」に登録して、自分だけの本を創ってみて下さい。「はてなダイアリーブック」の商品紹介は、こちらです。

 

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